第215章 IFストーリー

 このときの私は、ただ床に寝転がっていたかった。いつもなら氷川香織のことを、どこか言いようのない怖さを感じていたし、その理由も分かっているつもりだった。だが、今のこの状況で、いったい何を怖がる必要がある?

 家はなくなった。妻もいない。残っているのは子どもだけだが、この様子だと、最低でもその子どもは氷川香織に連れていかれる。そうなれば、文字通りの一人ぼっちだ。そこまで落ちぶれた男が、今さら何を恐れるというのか。

 だから私は、床に寝転んだまま、一片の怯えも見せずに氷川香織を真っ直ぐに見据えた。氷のように冷たい、その双眸と正面から視線をぶつけ合うのは、これが初めてだった。

 今となっては...

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