第216章 IFストーリー

 私が「今の家の様子を知りたい」と口にした瞬間、氷川香織の表情がふっと緩んだ。張り詰めていた空気が、目に見えて和らぐ。

 家のことを自分から聞く──それはまだ私に戻る余地があるという意味だ。そうなれば、彼女の仕事もぐっとやりやすくなる。

 もし私がどうしても首を縦に振らないのなら、力ずくで連れ戻すことだって、この女にはできるだろう。ただ、そこまでやれば私が心底嫌がることくらい、氷川香織も理解している。

 氷川香織は、ゆっくりと話し始めた。私は煙草に火をつけ、じっと耳を傾ける。

 ──私が家を飛び出したあと、まず私は義母に電話をかけていたらしい。すぐに家へ向かって海子を見ていてくれ、と...

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