第286章 IFストーリー

 長いこと考え込んだ末に、まずは氷川香織に電話をかけた。受話器の向こうの氷川香織は、相変わらず歯切れがよく、無駄のない話し方だった。ただ、どういうわけか声の端に、かすかな翳りが差している。本人はかなり巧妙に隠しているつもりなのだろうが、耳を澄ませば、そこに微かな憂いが混じっているのがわかった。

 あの氷川香織が、そんな声色になることなど滅多にない。芯が強く、多少のことでは揺らがない女だ。その彼女の感情をここまで左右するとは、いったい何があったのか。気にはなったが、詮索するつもりはなかった。今の用件は、あくまで休暇願いだ。

 事情を話すと、氷川香織はあっさりと承諾してくれた。それどころか、...

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