第287章 IFストーリー

待合室で待っているあいだに、すでに三十分は過ぎていた。ようやく海子が姿を見せ、その後ろからは主治医も現れた。検査結果も出たらしい。

こちらに気づいた海子は、一瞬だけ私と視線を合わせ、それからすぐに俯いて目をそらした。その瞳の奥に走ったのは、緊張と……かすかな恐怖。普段の海子は、どちらかといえば落ち着いた女だ。人前では感情を上手く取り繕うタイプで、取り乱すことなど滅多にない。だが今の彼女のわずかな乱れは、はっきりと伝わってくる。ここまで大きな隙を見せるということは、胸の内では相当な嵐が吹き荒れているということだろう。何をそんなに気にしているのか、何を恐れているのか――私にも見当がつかない。

...

ログインして続きを読む