第289章 IFストーリー

 電話の画面を開こうとして、最後のボタンに指を伸ばした、その瞬間だった。ポケットの中でスマホがぶるぶると震え出す。仕方なくマウスから手を放し、最後のクリックは中断されたままになる。

 少し苛立ちながらスマホをつかみ上げる。最近は仕事が忙しくて、一日に何十件も電話を取らされている。いつもの癖でぞんざいに画面へ視線を落とした――が、表示された名前を見た途端、頭の中が一気に醒めた。

 海子。

 この時間に、海子が電話をかけてくる……?

「もしもし、あなた、まだ仕事中なの?」

 通話ボタンを押すと、スピーカーから海子の声が流れてくる。いつも通り穏やかな声色……のはずなのに、その言葉の端に、...

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