第300章 IFストーリー

正直、私が躊躇していたときだった。海子からの電話が、またしても鳴り響く。ディスプレイに表示された時刻を見て、ようやく気づく。もう、いつもなら自分が家に戻っている時間だ。今ごろ海子は、家で私のことを待ちながら夕飯の支度を整えているのかもしれない。

ほんのわずかに考え込んだあと、私は結局その電話に出た。

「……あなた、どうしてまだ残業してるの? ご飯もう作ってあるのに。早く帰ってきて、一緒に食べようと思って……」

通話がつながると、受話器の向こうから、遠慮がちで小さく縮こまった海子の声が聞こえてくる。その声には、かすかな罪悪感と、どこか後ろめたさが滲んでいた。

その海子の気まずそうな声音...

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