第303章 IFストーリー

 海子のこくりと頷く仕草を見て、父はほうっと胸を撫で下ろしたように息を吐き、表情もいくらか和らいだ。その父の顔を見た瞬間、海子の瞳の奥に、ふっと複雑な光が走る。

 さっき父の部屋へ向かうまでのあいだ、海子の足取りは決して決然としたものではなかった。行っては立ち止まり、また数歩進んでは、何度も私たちの寝室のドアを振り返る。その様子からでも、自分がまたドアを開けて覗くんじゃないかと、彼女が怯えているのは明らかだった。つまり海子は、私が眠ってなんかいないと確信していたわけだ。何度かああいうことを経験して、こういう状況で私が安心して眠れるはずがないと、もう知っているから。

 それなのに、さっき父...

ログインして続きを読む