第103章

先に動いたのは蓮だった。彼は手土産の入った化粧箱をテーブルに置き、知意へ視線を向ける。その声は平坦で、いかなる感情も読み取れなかった。

「夏目さんもいたとは」

知意はソファに置かれたバッグを手に取り、そっけなく「ええ」とだけ返した。

彼女は蓮を一瞥もせず、青山の方へ向き直ると、再び顔に笑みを浮かべた。

「先生、私はこれで失礼しますね。また数日後に伺います」

青山は少し驚いたように手元の本を置いた。

「もう帰るのか? お前の分の食事も用意させているんだ、食べていきなさい。初音もいるし、一緒にゆっくりすればいい」

「用事がありますので」

知意の言葉は短かったが、その響きには揺るぎ...

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