第106章

「夏目さん、いらっしゃい」

彼女は足を止め、知意を見つめた。口元の笑みは計算し尽くされたように完璧だった。

「外に立っていないで、中へどうぞ」

彼女は少し間を置き、光へ視線を移すと、声をさらに甘くした。

「光、夏目葵おばさんを案内してあげて。こんな素敵な場所、きっと見たことないはずだから。おばさんはキッチンで美味しいものを作ってあげるわね。光の大好きなものを」

光は動かなかった。

彼は知意のそばに立ち、小さな手で彼女の指をぎゅっと握りしめたまま、清香を見上げている。その小さな顔に浮かんでいたよそよそしさは、やがて明確な拒絶へと変わった。

小さな唇が微かに動き、何かを言いかけて、...

ログインして続きを読む