第108章

入り口で微かな物音がした。

知意が顔を上げると、涙で滲んだ視界の先に、フルーツバスケットを手にした蓮が立っていた。

いつからそこにいたのか、どれほど長く立っていたのかは分からない。

その顔からは感情が読み取れなかったが、視線は知意の顔から光へ、そして彼女の襟元をぎゅっと握りしめる光の小さな手へと移り、そこで止まった。

知意はうつむき、彼を見ようとはしなかった。

光をそっとドールハウスの前に戻し、曲がった襟を直してやりながら、落ち着きを取り戻した声で言った。

「光、今日は満足するまで一緒に遊ぼうね。いい?」

光は力強く頷き、小さな顔に再び笑顔を浮かべた。

知意の手を引き、おもち...

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