第109章

知意は足を止めた。

その場に立ち尽くし、背を向けたまま何も言わない。

廊下の薄暗い照明が彼女を照らし、その影をどこまでも長く引き伸ばしている。

背後から、皓の足音が近づいてくる。威圧感を纏った、荒々しい足取りだ。

先ほど廊下の向こうから駆け寄ってきた彼は、女の背中しか見ていない——淡い色の服を着た、華奢な背中。長い髪が肩にこぼれている。

顔は見ていない。ただ、この女が甥をたぶらかし、兄を骨抜きにし、清香まで追い出した張本人だということだけは分かっていた。

「言っておくがな」

背後から投げつけられた声には、明確な脅しが混じっていた。

「痛い目を見たくなきゃ、俺の甥に近づくな。ち...

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