第145章

「夏目さん、現在の状況は我々にとって極めて不利です。法廷に持ち込んでも時間を引き延ばすだけで、勝ち目はありません」

川場靖博は書類を閉じ、お手上げだというように息を吐いた。

「蓮は資本と法律、両方の手段を動員しています。彼は最初から、あなたを手放す気などないのですよ」

知意の指先は氷のように冷え切っていた。しばらくしてようやく顔を上げると、その瞳の奥には死の灰のような静寂が広がっていた。

「……分かりました。ご苦労様でした、川場弁護士。今日はもうお引き取りください」

弁護士を見送ると、オフィスには彼女一人だけが残された。自分の重苦しい心音まで響くほど、空間がだだっ広く感じられる。

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