第174章

三人の背中が扉の向こうへ消えてようやく、ホールは一時停止が解除されたかのように、ざわめきが波となって押し寄せた。

一ノ瀬美衣子は扉の方向を見つめたまま口を半開きにし、やがて梨々香へ顔を向けて、上ずった声で尋ねた。

「どういうことなの?」

梨々香も状況が呑み込めない様子で、ただ首を横に振る。

殊はその場に立ち尽くし、遠ざかる三人の背中を見つめていた。胸が締め付けられ、無意識に知意を引き留めようと足を踏み出す。

だが、一歩踏み出した瞬間、一ノ瀬美衣子に腕をきつく掴まれた。彼女は首を振り、その動きを封じる。

袖を握りしめたまま、声を潜めて鋭く言い放った。

「行っては駄目」

殊は母を...

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