第23章

あの時はシンプルなカジュアルウェアに身を包み、少しばかり才能のある同業者にしか見えなかった。

だが、目の前にいるこの男は……

上質なスーツを隙なく着こなし、冷ややかな顔立ちをしている。全身から放たれるオーラは、あの日のディレクターとはまるで別人だった。

なぜ彼がここにいるのか。しかも、社長室のデスクに座っているなんて。

彼女の疑問に答えるかのように、報告をしていた部下が恭しく声をかけた。

「一ノ瀬社長、こちらが前四半期のプロジェクト収支報告書になります。ご確認ください」

一ノ瀬社長……。

知意の心臓が大きく跳ねた。

彼が、滅多に姿を見せないという一ノ瀬社長——この会社の真のト...

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