第58章

命と引き換えにしてまで産んだ我が子。その顔を、彼女はまだ一度も見ていなかった。

神谷家の人間は、あの子を大切にしてくれるだろうか。

ミルクを飲ませ、おむつを替え、優しく寝かしつけてくれるだろうか。

泣いたとき、誰かがあの子を抱きしめてくれるだろうか。

考えれば考えるほど、胸が締め付けられるように痛む。

スマホを取り出すと、指が勝手にあの見慣れた番号を呼び出していた。

長い躊躇いの末、発信ボタンを押す。

数回のコールの後、通話が繋がった。

耳に届いたのは、蓮の声ではなく——赤ん坊の泣き声だった。

知意の心臓が、激しく鷲掴みにされる。

私の子だ。

私の息子の、泣き声だ。

...

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