第60章

知意の表情は少しも変わらなかった。ただ湯呑みを手に取って一口飲み、淡々と言う。

「分かってる」

晩は彼女を見つめ、恐る恐る尋ねた。

「じゃあ……覚悟はできてるの? このプロジェクトを引き受けたら、遅かれ早かれあの人に会うことになるわよ」

知意は湯呑みを置き、静かな口調で答えた。

「会っても普通のことよ。北峰市なんて狭いし、世間も狭い。避けられないわ」

彼女は言葉を区切り、口角をわずかに上げた。

「公平な競争よ。諦めないし、全力で勝ち取りにいく」

晩は彼女を見て、ようやく胸のつかえが下りた。

知意は本当に、過去から吹っ切れたのだ。

「そういえば」

晩は何かを思い出したよう...

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