第70章

一方、知意が大楼を出る頃には、夜の帳がすっかり街を包み込んでいた。

殊はエントランスの明かりの下に立ち、彼女が出てくるのを見ると、頷きながら口元に微かな笑みを浮かべた。

「行こうか。ホテルまで送るよ」

知意は頷き、遠慮せずに応じた。

二人は並んで駐車場へ向かい、時折声を潜めて、先ほどの会議の細部について言葉を交わした。

夜風が柔らかく彼女の髪を揺らす。殊は横目で彼女を見やり、その眼差しには気づかれにくいほどの優しさが滲んでいた。

ホテルに着くと、エレベーターは上へ向かい、十二階で止まった。

二人は降りて、廊下をそれぞれの部屋へと歩き出した。

角を曲がった直後、ある光景が不意に...

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