第74章

知意が化粧室から戻ると、殊が悠太を連れて滑り台で遊んでいた。

傍らに立つ梨々香は、知意の顔色がすっかり元通りになっているのを見て、それ以上は何も聞かなかった。

「行こう」

知意は悠太の手を引いた。

「もう帰る時間だよ」

悠太は名残惜しそうに滑り台を振り返ったが、大人しく彼女について歩き出した。

家に着く頃には、夜の闇がすっぽりと街を包み込んでいた。

シャワーを浴び終えた知意はベッドのヘッドボードに寄りかかり、窓の外に広がる深い夜空に視線を落とした。

昼間に見かけた、ネイビーのアウターを着た小さな後ろ姿が脳裏をよぎる。

顔を上げて笑う姿。父親の手を引いて跳ねるように歩く姿。

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