第75章

彼女はそれ以上取り合わず、おもむろに立ち上がると、千都に別れを告げて会議室を後にした。

天窓から降り注ぐ陽光が、彼女の輪郭に淡い光の輪を落とす。

振り返ることなく、一定の歩調で長い廊下を抜け、背中に突き刺さる底知れぬ視線を遠く置き去りにした。

廊下の突き当たりから、小さな影が不意に飛び出してきた。

「お姉ちゃん!」

光は小さな顔を真っ赤にして駆け寄り、彼女の脚にぎゅっとしがみついた。見上げる瞳が、きらきらと輝いている。

知意の心は、一瞬にして水のように柔らかく溶けた。

しゃがみ込み、ハンカチで額の汗を拭ってやる。その手つきはひどく優しい。

「どうしてまだここにいるの?」

柔...

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