第84章

知意は車で会社へ戻り、駐車場に停めて上の階へ向かった。

オフィスのドアを押し開けると、ソファには殊が座って待っていた。目の前には数部の資料が広げられている。

「おかえり」

顔を上げ、彼女の顔に一瞬だけ視線を留めた。

「顔色が悪いな。何かあったのか?」

知意は向かいに腰を下ろし、今日あったことを手短に話した。

聞き終えた殊は数秒沈黙し、微かに眉をひそめる。

「奴は君を探っている」

断言するような口調だった。

「訛りの件はただの探りだ。すでに疑いを持っているはずだ」

知意は頷いた。表情は穏やかだ。

「分かっています」

殊は彼女を見つめる。その目には僅かな懸念が混じっていた...

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