第89章

午後十一時。クリエイティブ第二チームのオフィスに、ようやく静寂が訪れた。

最後の企画書をメールで送信し終えると、中川は椅子の背にもたれかかり、大きく息を吐いた。

彼は知意の個室の方へちらりと視線をやる。

あそこの明かりはまだ点いている。あの女はまだ中にいるのだ。

中川の口角が意味ありげに吊り上がる。彼は立ち上がり、上着を手に取った。

「帰るぞ」

他のメンバーに目配せをする。

数人の社員たちは暗黙の了解で帰り支度を始めた。足音をわざと忍ばせながらも、そこには確かな共犯者の空気が漂っている。

山田は知意の部屋の前を通り過ぎる際、中を覗き込み、気づかれない程度の薄笑いを浮かべた。

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