第5章
高橋健太視点
ドアを押し開けると、ソファで咲良が本を読んでいるか、恵美の部屋から彼女のか細い寝息が聞こえてくるか、そんな光景が待っているはずだった。
だが、ブラインドの隙間から差し込む月明かりが照らしていたのは、誰もいないリビングだった。
「咲良!恵美!どこにいるんだ!」
俺の声は、答えのない虚ろな響きとなって返ってきた。恵美のおもちゃがなくなっている。いつもコーヒーテーブルの上を散らかしていた彼女の小さなお姫様のお城は跡形もなく消え、そこにはただ片付いた天板と、恐ろしいほどの現実だけが残されていた。
その時、俺はそれを見つけた。
コーヒーテーブルの上には、まるで最終...
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