第6章
高橋健太視点
俺は、とにかくハンドルを握りしめていた。午後十一時。もう二度と会いたくないと思っているであろう家族を追いかけて、俺は北島へと向かう暗闇の中を車で走っていた。
咲良が昔よく聴いていた曲が流れている――女性歌手が、失った恋人のような人を見つけることについて歌っていた。
「俺はなんてことをしてしまったんだ……」バックミラーに映る自分に、俺は囁いた。「咲良は俺のために看護学校を辞め、俺が銀坂でのクソみたいな夢を追いかけている間、ダブルワークで学費を払ってくれたっていうのに」
星台の近くにあるガソリンスタンドに車を停めると、手が震えていた。蛍光灯の光が、あらゆるものを冷た...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章


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