第7章

平野咲良視点

「平野さん、本当に手際がいいわね」川村医療センターの救急外来で、私が三人の患者を効率よくさばいているのを見て、中村さんが言った。午後のラッシュは最高潮に達していた。

「まるで家に帰ってきたみたい」私は動じない手つきで点滴を調整しながら答えた。「これが、私のいるべき場所なんです」

自動ドアが音を立てて開き、間宮先生が湯気の立つコーヒーを二つ持って現れた。その顔には、いつもの優しい笑みが広がっている。

共に働いて半年、私たちの間にはほとんどテレパシーのようなリズムが生まれていた。三号室の混沌とした状況の後で、私がカフェインを必要としていることを、先生は分かっていたのだ...

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