第103章

時折、彼女の指先が不意に熱を帯びた肌に触れる。そのひんやりとした感触は、小さなやすりのように盛岡晃の神経をじりじりと削っていく。

二人の距離は近い。彼女から漂う、冷ややかな香りが鼻をくすぐるほどに。

しかし二人の心には、決して埋まることのない深い溝が横たわっていた。

部屋の中は静まり返り、綿棒が肌を擦る微かな音だけが響いている。

この沈黙は、どんな激しい口論よりも息苦しい。隙間のない網のように二人を雁字搦めにし、声なき空間でわだかまりが少しずつ膨らみ、発酵していく。

浅沢瑶は機械的に薬を塗る動作を繰り返し、ただ一刻も早くこの時間を終わらせたかった。

ガーゼを取ろうと手を伸ばしたそ...

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