第108章

背中の鞭の傷はまだ完治していないのだろう。立ち姿にはわずかな硬さが残っていた。それでも、その深淵のような黒い瞳は彼女をじっと見据え、まるで獲物を待ち伏せる豹のようだった。

浅沢瑶の足が止まったのは、ほんの半秒。すぐに何事もなかったかのように歩みを進めた。

心の底にはさざ波ひとつ立たない。「どうしてここにいるの」と尋ねる気すら起きなかった。

「乗れ」

盛岡晃が彼女の行く手を塞いだ。声はしゃがれ、有無を言わせぬ強引さが滲んでいる。

「飯に行くぞ」

断ろうとした浅沢瑶だったが、胃の奥で疼くような空腹感がそれを引き止めた。今ここで何か口にしておかなければ、今夜もまた乗り切れないかもしれな...

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