第130章

これのどこが財産分与だというのか。盛岡晃は自分の全財産と命を、そっくりそのまま彼女の手に委ねようとしているのだ。

とうの昔に死に絶えた結婚生活を引き留めるために、自己破滅にも等しいこんな手段に出るなんて、彼は一体どこまで狂ってしまったのだろう。

「いりません」

我に返った浅沢瑶は、冷ややかに突き放した。

「持ち帰って彼に伝えてください。私が欲しいのは、離婚届だけだと」

「浅沢さん。盛岡社長からは、もし受け取っていただけない場合は、受け取っていただけるまで明日以降も届け続けるようにと言いつかっております」

石井弁護士の態度は恭しかったが、その言葉には有無を言わせぬ響きがあった。

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