第50章

彼女はゆっくりと姿勢を正し、口角を少しだけ上げたが、その笑みは決して目元には届いていなかった。

「一分一秒たりとも」

その短い言葉は鋭い刃のように、盛岡晃の心臓を容赦なくえぐった。

彼は呆然とし、その深い漆黒の瞳は一瞬にして氷のように冷たく凍りついた。

彼には理解できなかった。かつては片時も離れたくないとばかりに自分に寄り添っていた女が、どうしてこんな姿に変わってしまったのか。

無意識に手を伸ばし、彼女を引き寄せようとしたが、浅沢瑶はそれを激しく振り払った。

彼女の目には一抹の躊躇もなく、ただむき出しの拒絶と嫌悪だけがあった。それは形のない鋭い剣のように、彼がまとっていた強さの偽...

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