第63章

意識が遠のく中、彼女は震える手でバッグからスマホを探り当て、最後の本能にすがるように電話をかけた。

「遠藤毅……」

消え入りそうなほど弱々しい声だった。その名を口にした直後、再び襲いかかってきた激痛に目の前が真っ暗になる。力のない指先からスマホが滑り落ち、彼女は冷たい壁に沿って崩れ落ちるように倒れ込み、完全に意識を失った。

……

市内でも最高級のフレンチレストラン。店内には、優雅なバイオリンの音色がゆったりと流れていた。

宇佐美萌は盛岡晃の向かいに座り、スマホの角度を念入りに調整しながら、目の前に並んだ美しいアフタヌーンティーの写真を何枚も撮っていた。盛岡晃の腕時計をつけた手もわざ...

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