第77章

通話を切ると、彼はもう宇佐美萌を一瞥することもなく、そのままドアを開けて運転席に乗り込んだ。

走り去る車の後ろ姿を見つめる宇佐美萌の瞳の奥で、涙が瞬時に凍りつく。代わって浮かび上がったのは、どす黒い怨嗟と激しい未練だった。

郊外のモデルルームから出てきた浅沢瑶の心には、さざ波ひとつ立っていなかった。

部屋の広さも、内装の有無も関係ない。彼女にとって、それらはすべて一時的に身を寄せるための箱にすぎないのだ。

彼女が必要としているのは、完全に自分だけの空間。残された人生の最後の時間を、誰にも何事にも縛られずに過ごせる場所だった。

敷地のゲートを抜けた途端、見慣れた黒のベントレーが滑るよ...

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