第80章

物音に気づき、浅沢瑶の顔に浮かんでいた笑みがわずかに強張った。やって来た人物の顔を確認した瞬間、彼女の瞳の奥にあった優しさは潮が引くように消え去り、代わりに事務的で冷ややかなよそよそしさが宿る。

「盛岡社長」

彼女は夏美を膝から下ろし、一切の抑揚がない声で言った。さっきまで声を上げて笑っていた女など、盛岡晃の見た幻だったのではないかと思わせるほどだ。

そのあまりの豹変ぶりに、盛岡晃は苛立ちを覚えて眉間を寄せた。

ちょうどその時、長谷川薫が外から探しにやって来た。盛岡晃がいるのを見て軽く会釈をし、それから申し訳なさそうに浅沢瑶へ視線を向ける。

「ごめん、瑶。ちょっと電話に出てて、この...

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