第86章

浅沢瑶は通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

「仲山謡子」

『瑶さん!』

受話器の向こうから聞こえてきた仲山謡子の声は、抑えきれない怒りを孕んでいた。

『今日、会社でどれだけあり得ないことが起きたか、知らないでしょう! もう本当に腹が立って爆発しそう!』

浅沢瑶は椅子の背もたれに寄りかかり、穏やかな声で返す。

「どうしたの? ゆっくり話して」

『あの宇佐美萌のことに決まってるじゃないですか!』

仲山謡子は歯ぎしりせんばかりの勢いでまくしたてる。

『今朝の役員会議で、盛岡社長が城東で一番利益の出る新エネルギー関連プロジェクトを、そのまま宇佐美グループに回しちゃったんですよ!...

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