第102章

薬の効果によって、月見華の視力はようやく回復の兆しを見せ始めていた。

目の前を覆っていた伸手不见五指(しんしゅふけんごし)の漆黒は消え去り、代わりにぼんやりとした光と影が滲んでいる。

それによって彼女の張り詰めた神経はわずかに緩んだものの、鴉崎響に対する拒絶感は少しも減じてはいなかった。

鴉崎響が近づこうとするたび、彼女は反射的に顔を背けるか、あるいは冷たく言い放つ。

「自分でやる」

その頑なな態度に、鴉崎響の顔色は回を追うごとに陰鬱さを増していったが、決して感情を爆発させることはなかった。

その奇妙な膠着状態が、病室の空気を重く淀ませていた。

ある日の午後。月見華はベッドの背...

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