第109章

和泉凛太は口ごもったが、最後には勇気を振り絞って言った。

「鴉崎社長、姉さんは……もう十分に苦しんできました。どうか、これ以上彼女を傷つけないでやってください」

言い終えると、彼は病室のドアを名残惜しそうに一瞥し、踵を返して廊下を去っていった。

鴉崎響は何も答えず、病室へと足を踏み入れた。

ドアが開く音に、スマホを見ていた月見華はハッとして顔を上げた。

入ってきた人物を認め、彼女は息を呑んだ。

鴉崎響だった。

だが目の前の彼は、記憶にある完璧で冷徹な、あの高貴な姿とはかけ離れていた。

シャツの襟元はだらしなく開き、顎には青い髭が浮き、髪もどこか乱れている。

何より目を引いた...

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