第110章

鴉崎響の顔色が瞬時に曇り、瞳の奥に微かな怒気が走った。

だが結局、彼は唇を堅く引き結んだまま何も言わず、踵を返して去っていった。

しかし、その日の午後、鴉崎響は執事を呼びつけた。

書斎の椅子に深く腰掛け、しばしの沈黙の後、恭しく控える使用人に命じた。

「調べろ。奥様が……昔、どんな花を好んでいたかをな。いくつか見繕って庭に植えるんだ」

使用人は迅速に動いた。月見華が銀木犀を好んでいたことを突き止めると、直ちに手配し、その日の夜のうちに植え替えを完了させた。

その夜、月見華は深く眠っており、外で何が起きているか知る由もなかった。

翌朝。まだ目覚めきらぬ意識の中で、彼女は甘く、どこ...

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