第113章

誰にも気づかれたくなくて、彼女は薬箱を手に取り、独りで処置を始めた。

傷は背中にある。手つきは覚束なく、古いガーゼを剥がす時に誤って患部を引っ張ってしまった。

鋭い痛みに息を呑み、手が震えて薬瓶を取り落としそうになる。

その時、洗面所のドアが開いた。

鴉崎響がバスローブ姿で入り口に立っていた。

鏡の前で悪戦苦闘する彼女の無様な姿を見て、彼は眉を寄せる。

「動くな」

彼は大股で近づき、有無を言わせず彼女の手から薬瓶とガーゼを取り上げた。

深夜、ただ彼女の様子を見に来ただけだったが、まさかこんな光景に出くわすとは。

月見華の体が強張る。反射的に身を引こうとした。

「自分ででき...

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