第16章

「安心しろ、もう大丈夫だ」

八朔綾人は振り返り、彼女を一瞥した。その瞳には微かな憐憫が宿っている。

「二度とあんな真似はさせない」

月見華は彼の好意を痛いほど理解していた。

「ええ……ありがとうございます、八朔さん」

それきり、彼女は口を閉ざした。

隣に座っていた朝霧詩羽は、二人の会話が終わったのを見計らって片眉を上げた。

「八朔社長、これで私に大きな借りができたわね。以前約束してくれた件だけど……」

「分かっている」

八朔綾人は淡々と応じた。

朝霧詩羽は満足げに笑みを浮かべ、それ以上は語らなかった。

朝霧家の屋敷が近づいた頃、八朔綾人が不意に問いかけた。

「月見華、...

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