第172章

言い捨てると、彼はもう鴉崎理を見ようともせず、月見華を横抱きにして扉へと歩き出した。

残された鴉崎理は、月見華を連れ去るその背中を食い入るように見つめ、両の拳をきしりと鳴るほど強く握りしめた。

「鴉崎響……覚えていろ」

低く呟かれたその声には、身の毛もよだつような冷気が渦巻いていた。

プライベートジェットは夜を徹して海を越えた。

月見華が次に意識を取り戻したとき、そこは見慣れた屋敷の中だった。

彼女は弾かれたように目を開ける。

視界に飛び込んできたのは、見覚えのある天井。

連れ戻されたのだ。鴉崎響によって、強引に。

M国にいたはずなのに、なぜ目が覚めたら、またこの牢獄に逆戻...

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