第21章

翌日の午後、空は晴れ渡っていた。

心知ギャラリーのVIPルームには、テレピン油とコーヒーの香りが入り混じって漂っていた。

月見華はソファに端然と腰掛け、目の前のコーヒーカップを見つめている。

洗練されたビジネススーツに身を包み、表情は平静そのものだ。だが、彼女はすでに十分間も待たされていた。

足音が近づき、ドアが開かれる。長身の男が足を踏み入れた瞬間、広いはずの個室が急に窮屈になったかのような錯覚を覚えた。

月見華は立ち上がり、振り返ってその鋭利な視線を受け止める。

漆黒の瞳の奥に、一瞬だけ驚きの色が走ったのを彼女は見逃さなかった。

「鴉崎社長?」月見華は驚いたふりを完璧に演じ...

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