第22章

「額装して、鴉崎社長に届けて」

彼女は淡々とアシスタントに命じた。

翌日、漆野哲也が自ら画廊を訪れ、額装を終えたその作品を引き取っていった。

絵画は、鴉崎響の広々としたオフィスの、まさに中心に置かれた。

彼は側近たちをすべて下がらせ、一人、画架の前に立った。

その視線は、キャンバスの隅々まで、一寸の隙もなく舐めるように走る。

彼は探していた。

そこに懐かしい痕跡を。

記憶の中に生きるあの「月見華」と、この絵を結びつける何かを。

だが、期待は裏切られた。

それは完璧な作品だった。技法は熟達しており、彼が渡した写真を寸分違わず模写している。誰が見ても非の打ち所がない出来栄えだ...

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