第27章

彼は空になったカップを茶卓に戻すと、いつもの冷え冷えとした声で言った。

「車の鍵は車内だ。失礼する」

そう言い捨てると、彼は彼女を一瞥もせず、踵を返して大股で別荘を出て行った。

門の外でエンジンの音が遠ざかるのを確認して初めて、月見華はほうっと息を吐き出した。背中にはじっとりと冷や汗が滲んでいる。

仕方がない。彼との接触は、毎回が戦争のようなものだ。

朝霧一輝が不満げに頬を膨らませて寄ってくる。

「姉さん、なんであいつを中に入れたのさ? 見る目がなんか変だったよ。善人には見えない」

月見華は疲労困憊といった様子で眉間を揉み、声を潜めた。

「一輝、避けられないこともあるの。あえ...

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