第36章

月見華は張り詰めていた糸がふっつりと切れたように、安堵の息を吐いた。

彼女はそのまま屈み込むと、心の頭を優しく撫でる。

「よし、おばちゃんがご飯に連れて行ってあげるね」

そして、天ノ川夢乃に目配せをした。

「夢乃、早く入ろう」

その間、彼女は一度たりとも鴉崎響の方を見ようとはしなかった。

鴉崎響はその場に立ち尽くし、扉の向こうへと足早に消えていく三人の背中を見つめながら、胸の奥にかすかな疑念を抱いていた。

ホテルの個室に入り、ドアが閉まった瞬間。

天ノ川夢乃は力が抜けたように、その場へへたり込みそうになった。

「もう、死ぬかと思った! 華ちゃん、私の不注意のせいでごめんね!...

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