第51章

「分かってる、早く行って」月見華は呆れたように彼の背中を押した。

扉を閉めて振り返ると、あろうことか鴉崎響が……ソファにもたれかかって眠り込んでいた。

ここなら安全だと思っているのだろうか?

以前の彼は自宅以外で眠ることなどなかった。ホテルに泊まる際も、必ず側近に見張らせていたはずだ。

幾度となく嫌がらせや暗殺未遂に遭ってきたのだから、無理もない。

月見華は疑わしげな視線を彼に向けた。

発熱と疲労が重なり、強靭な精神をついに崩壊させたのかもしれない。

閉じた瞼、重苦しい呼吸。

普段の冷徹さや鋭利な雰囲気は消え失せ、そこには奇妙な静寂と――得体の知れない孤独だけが漂っていた。

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