第53章

「そうですか?」鴉崎響の瞳の奥に、微かな怒りの色が走った。

「他に何があるとおっしゃるのですか、鴉崎社長」彼女は淡々と問い返す。

その声は凪いだ水面のように静かで、瞳には一片の感情も宿っていない。

鴉崎響は彼女を射抜くように凝視した。

そのあまりに平然とした瞳の奥に、偽りの欠片でも見つけ出そうとするかのように。

だが、徒労に終わった。

彼は短く息を吐き、視線を外す。

月見華は誰にも気づかれぬほど微かに口角を上げ、再びステージへと顔を向けた。

舞台上では、月見光の歌唱が終わるところだった。

一瞬の静寂の後、宴会場は割れんばかりの拍手と喝采に包まれた。

激しく明滅するフラッシ...

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