第9章
彼女は八朔綾人が気が変わるのを恐れ、小切手を握りしめると、逃げるようにその場を後にした。
病室に、ようやく完全な静寂が戻る。
八朔綾人は、ベッドの上で小さく丸まり、声もなく涙を流し続ける月見華を見つめた。その胸には、切ないほどの憐憫が込み上げてくる。
彼はそっと彼女の布団をかけ直し、低く優しい声で言った。
「もう怖がらなくていい。これからは誰にも、君に無理強いなんてさせない」
「ありがとうございます、八朔さん……どうやってご恩をお返しすればいいか」
月見華は震える声で礼を言い、再び瞳から涙が溢れ出した。
八朔綾人は慈しむように微笑んだ。
「生きてくれ。ただ生きてさえいてくれれ...
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