第5章
家路の途中、車窓の外のネオンが雨水に滲み、色とりどりの光の輪となっていた。
私は目を閉じ、車体の振動を感じていた。
松尾修と椎名由衣の間に何かがある。それはもはや憶測ではなく確信だった。彼らの間に、もう後ろめたさのない関係は存在しない。だが不思議なことに、もう胸の痛みは感じなかった。まるで、彼が手術のメスを置いたあの瞬間に、私の心は麻痺してしまったかのようだった。
「今野先生、着きましたよ」
村上誠の声が、私を思考の海から引き戻した。目を開けると、いつの間にかマンションの前に着いていた。どうやら私は眠ってしまっていたらしい。
「すみません、送っていただいて」
私は目をこ...
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