第7章

椎名由衣は病院の廊下で崩れ落ちた。

床に膝をつき、両手で顔を覆ってしゃくり上げる。涙で化粧はぐちゃぐちゃに崩れていた。

周りの医療スタッフや患者たちが足を止め、ひそひそと囁き合う声がそこかしこで上がる。

「あれが松尾先生の愛人か?」

「恥知らずね。人の結婚に割り込んでくるなんて」

「舞台女優らしいわよ、椎名なんとかって……」

松尾修は血の気の引いた顔で、まるで床に釘付けにされたかのようにその場に立ち尽くしていた。その視線は私と椎名由衣の間を彷徨うだけで、何の反応も示せないでいる。

私はこの茶番劇から目をそらし、背を向けてその場を離れた。

午後になると、その知らせは...

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