第280章 お年玉を奪う

藤原太郎は、向日美香の心に再び火を点けるには、順を追って少しずつ進める必要があると熟知していた。

意図的に話題を誘導し、思い出を潮のように押し寄せさせる——青春時代のあの胸の鼓動、教室の廊下での偶然の出会い、卒業間近の約束……その一コマ一コマが、彼が巧妙に仕掛けた甘い罠だった。

向日美香も当然その魂胆に気づいていた。彼女は頬を微かに染めながらも、わざと平静を装って話の矛先を逸らす。

「そういえば、昔の担任の先生、今はどうしていらっしゃるの?」

藤原太郎はすかさず話を合わせた。

「体はまだ丈夫だよ。ただ足腰が少し弱っているみたいだが、まあ年のせいだろう! この前の同窓会では、わざわざ...

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