第356章 全部鳴海へ行く

「尾川家?」

藤原家の面々が、そろって目を丸くした。

尾川家――その名を知らないはずがない。

S市一の名家と呼ばれる松本家よりも、さらに格が違う。かつて尾川秀和が一代で尾川家を押し上げ、鳴海で“第一”の座に据えたのだ。

藤原の祖父が健在だった頃、口癖のように言っていた。

「尾川秀和を目標にしろ」と。

だからこそ、藤原家の人間は信じられなかった。自分たちが尾川家と縁を持つ日が来るなんて。そのうえ、助け出してくれたのが尾川家の人間だという。

――運が向いてきた。これなら、藤原家ももう一度這い上がれる。

藤原の祖母は満面の笑みで、尾川昌浩に頭を下げた。

「尾川さん、私どもを助けて...

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