第390章 激戦

出村良三が生涯でもっとも得意としていた武勇伝――それは、走行中の車を素手でひっくり返したことだった。

彼の両手は、一見すると力などなさそうに見える。だがひとたび繰り出せば、相手の力を受け流し、殺してしまう。

単なる拳より、よほど厄介だ。

拳は硬い。ぶつけ合うしかない。けれど掌は違う。柔らかくもなり、硬くもなる。流し、絡め取り、最後に叩き潰す。

出村良三の掌は強かった。鳴海で、少なくとも彼に勝てる人間などいない――そのはずだった。

しかも背後には、自分の隊員が控えている。高橋祐介が隙を見せた瞬間、一斉に仕留める。全員がそのつもりで、呼吸まで合わせていた。

だが高橋祐介は、相手の殺気...

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